2026.02.03

障がい者インクルージョンLab. 実施レポート

毎年12月3日から9日は、障がいへの理解を深め、誰もが共生できる社会を目指す「障がい者週間」です。2025年12月8日(月)、日本橋室町三井タワーにて、『障がい者インクルージョンLab.』を開催しました。主催はウーブン・バイ・トヨタ、三井不動産、共催はEY Japan、中外製薬、三井化学の計5社。障がい理解のきっかけとしてのパラスポーツ体験会、障がいのある従業員も登壇・参加するラウンドテーブル、そして、各社の知見を共有するグループワーク・懇親会を通じて、障がい者インクルージョンに関する理解を深める場となりました。

◆登壇者 (写真左から)
ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
Director, HR Business Partner & Executive Liaison, Human Resources, Global Operations
縄船 剛志氏

ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
Head of Japan Talent Acquisition
桑原 メリッサ 氏

国立大学法人 筑波技術大学
副学長(教育担当)、共生社会創成機構長、産業技術学部 教授
谷 貴幸氏
(写真左から)
EY Japan株式会社
ディレクター Talent-D&I
梅田 惠氏

EY Japan株式会社
アシスタントディレクターTalent-D&I
富田 宇宙氏

三井化学株式会社
人事部 グループ障害者雇用プロジェクト プロジェクトリーダー
安井 直子氏

三井化学株式会社
人事部 ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョングループ
手嶋 修一氏

中外製薬株式会社
人事部DE&I推進グループ グループマネジャー
佐藤 華英子氏

中外製薬ビジネスソリューション株式会社
CS事業推進部 ダイバーシティワーク推進グループ
企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ) 障がい者職業生活相談員
三國 由騎氏

"楽しい""すごい"からはじまる障がい者理解

プログラムに先立ち、障がい理解のきっかけとして、車椅子バスケットボールとパラ射撃の体験会を開催しました。車椅子バスケットボールはウーブン・バイ・トヨタ所属のパラアスリート・熊谷悟選手、パラ射撃は日本パラ射撃連盟の協力により実施しました。

「観たことはあったけど、プレーするのは初めて」「わずかな姿勢の違いで結果が変わる」などの声も聞かれ、競技の奥深さに魅了される参加者もいました。スポーツをきっかけとして、障がいへの理解を自然に押し広げる印象的なプログラムとなりました。

当事者の声がまちをつくり、組織を変える

プログラムの第1部として、主催のウーブン・バイ・トヨタおよび筑波技術大学にて、『働きやすさの未来を共に描く』をテーマとした基調講演が展開されました。

筑波技術大学の谷先生からは、「理解することが目的ではなく、寄り添う姿勢が現場を変える」と長年の経験からご紹介いただきました。

ウーブン・バイ・トヨタでグローバル採用を進める桑原氏からは、同社が世界70カ国以上の従業員で構成されるという特徴を踏まえて、「『日本対外国人』ではなく、多様な国籍が並列に存在する職場であることが、自然なインクルージョンを生んでいる」とインクルーシブな組織運営についてご説明いただきました。

続いて縄船氏からは、トヨタグループが掲げる「Mobility for All」を起点に、誰もが"自分らしく移動できる社会"を実現するための取り組みが語られました。同社の実証都市「ウーブン・シティ」プロジェクトでは、障がいのある方や多国籍の社員に実際に生活環境を体験してもらうツアーが実施されていると紹介されました。

実際に車椅子ユーザーとして現地を訪れた社員の方もイベントにご参加いただいており、低めに設計されたキッチンであっても奥に手が届かないなど、「やってみて初めて分かる不便」が多く存在したとのこと。「未完成の街だからこそ、当事者の声を反映して、もっと良くしていける」と前向きなコメントが共有されました。

"活躍を生む"採用・定着・配慮のリアル

第2部では、三井不動産の新規事業として実際に障がいのある方と協働するSUPERYARDの大益氏がファシリテーターを務め、EY Japan、三井化学、中外製薬の3社によるパネルディスカッションを行いました。

EY Japanの梅田氏は、障がい者雇用を進め苦労したのは「社内営業」だったと語ります。「企業として障がい者採用は積極的に実施するべき、しかし自分の組織で障がい者を採用するのは難しい」という意識を変えるため、梅田氏は大学へのヒアリングやインターン導入で"まず関わる機会"を創出し、既存制度の対象拡大や運用工夫を提案。経営層には「障がい者雇用は長期的な価値を生む投資」と訴えてきました。

同じくEY Japanの富田氏は、視覚障がい水泳のパラリンピアンとしての活動と並行して、同社でDE&Iアシスタントディレクター(課長級)として業務に参画しています。自身の経験と研究をもとにインクルーシブカルチャー実現の土台として管理職向けのメンタルトレーニング研修「ご機嫌学」を企画・推進。「自分も相手も機嫌よくコミュニケーションできる心の在り方と思考の習慣を身に着けることが、ウェルビーイングとDE&Iの相乗効果を生み、障がいの有無にとらわれない職場づくりにつながる」と締めくくりました。

続いて、三井化学の安井氏は「特例子会社を持たず、障がいのある社員を各職場の一員として迎える」方針を紹介しました。単に法定雇用率を満たすのではなく、「戦略目標を共に追求する仲間として配置することで、本当に必要な業務を担ってもらうことを目指している」と語りました。また、今後の課題として、全国にわたるグループ全体での障がい者雇用の推進が述べられました。

採用実務を担う同社手嶋氏からは、入社後のミスマッチを減らすための同社の採用プロセスを説明いただきました。また、視覚障がいのある立場から、スクリーンリーダー環境の整備やジョブコーチによるシステム利用支援、ビル内の点字ブロックや会議室表示など、具体的な合理的配慮の工夫も共有されました。一方、タッチパネル式のコーヒーマシンのように、自分一人ではまだ使えない場面も残っていることが、今後の課題として挙げられました。

中外製薬の佐藤氏からは、「多様な人材の活躍による価値創出」が障がい者雇用の目的だと強調したうえで、特例子会社を持たずにグループ全体で雇用を進める方針と、その中での試行錯誤を率直に語りました。特にR&Dなど高い専門性が求められる職種での採用は難しく、これまでは通常採用枠の中で"偶然出会えた"ケースに限定されていた側面もあったといいます。

そこで同社は、関係会社の中外製薬ビジネスソリューションに業務を切り出し、外注していた仕事を内製化することで、より幅広い障がい特性に合ったポジションを創出。ジョブコーチの三國氏は、当事者への支援だけでなく、仕事の切り出しや業務マニュアルの改善、各拠点との情報共有を担い、当事者同士の理解とチームワークづくりを重視していると説明しました。

モデレーター大益氏は締めくくりに、「今日の話は、法定雇用率を満たすための雇用ではなく、障がいのある人の力で事業課題を解決していく実例だった」と総括。現場の工夫から生まれる姿が共有されるパネルディスカッションになりました。

"同じ課題を抱える仲間"としてつながった時間

パネルディスカッションに続くグループワークや懇親会では、登壇者と参加者が一体となり、活発な意見交換を行いました。各社の事例を聞いた参加者が自社の課題を率直に共有し始め、同じ問題意識を持つ仲間同士の対話へと広がっていきました。

「理想は分かるけれど、現場ではどう対処すればいいのか」といった、一筋縄ではいかないテーマも多く、立場の異なる人同士が集まり語り合う重要性を改めて感じさせる時間となりました。

『三井のオフィス』は、誰もが生き生きと活躍できる環境づくりに向けて、今後もさまざまな情報発信や連携・対話の場を創出することで、DE&Iを推進していきます。

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